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構成

③〈構成〉

『TERAYAMA DAIDO』Shuji Terayama + Daido Moriyama[英][日](bookshopM/2016年)
『TERAYAMA DAIDO』Shuji Terayama + Daido Moriyama[英][日](bookshopM/2016年)

『TERAYAMA DAIDO』は、『スポーツ版裏町人生』寺山修司(新評社/1982)の全3章28節の中から5つの節を抜粋し、森山大道の写真と組み合わせ再編集されている。『DAZAI DAIDO』と同コンセプト、同フォーマットを用い、[英][日]同じ頁構成なるよう文字組を調整している。
文章と写真の関係というのは不可解で、一枚の写真が文章を読み解く大きな手がかりになることもれば、一行のキャプションが写真をまったく別物にすることもある。雑に言ってよければ、文章は映像を、写真は文章を、それぞれ内包しているため、組み合わせによっては、パンと納豆にもラーメンライスになりえるからだろう。それゆえ、組写真で何かしらを綴ろうとする写真集に文章を並べると悪手で終わることが多い。
『TERAYAMA DAIDO』は、寺山の文章内容に合わせた写真セレクトと構成になっている。森山の本としては実にオーソドックスな構成という印象を受けるが、寺山の文章をこれだけ多用しつつ、写真集としての訂を崩していないことに驚愕する。写真の一点一点が、文章の一行一行が、ラーメンライスのようにしっくりと関係し合い、書籍から見ても写真集から見てもこれまでにないつくりになっている。町口の本を仕上げる能力の高さと汎用性が伺える一冊だ。
表紙には森山大道の最も有名な一枚「三沢の犬」を使用した。

⑤〈構成〉

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)
『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)

写真構成とレイアウト
写真集としては比較的珍しい「見開き/写真4点」という構成が、本全体の半分を占めている。「写真点数を多く入れたかったから」と町口は言うが、「多く入れたい」だけでないことは、上二点が部屋/下二点が花、左二点が部屋/右二点がヌード、対角に花とヌード…といった見開き4点の多様な使い道が物語っている。タイトルからわかるように3つのテーマが立てられており、写真構成自体はテーマに沿って素直に組まれている。しかし、この写真集は、いわゆる「写真構成」からはかけ離れた印象を受ける。どんな写真集も必ず構成されているわけで、そこには少なからず(大抵は大きく)構成者の意図が良くも悪くも反映される。たとえば写真を2点並べることによってある意味が生まれ、その写真が単体でもっていた意味を変えてしまうことも少なくない。多くの構成者がこのジレンマと格闘している。

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』は、まるで、写真家のブック(またはスリーブファイル)をそのまま見せられているかのような錯覚を覚える。その理由として、見開き4点というフォーマットの影響は大きく、一般的に2点より3点、4点と、点数が多いほうが「構成による意図」は薄まって見えるからだ。しかし本作は構成意図が弱いわけでは決してなく、むしろこの構成意図をページをめくる読者に感じさせる。この不思議な感覚は、おそらく「見開き4点」と「3つのテーマ」という独特の設計バランスから生まれたものだろう。雄しべのような男性ヌード、世帯主のようなドライフラワー、窓(フレーム)を意識する風景——3つのテーマのスキ間を浮遊する野村佐紀子の写真を見せるには、この設計である必要があったのだ。野村佐紀子のプリントを見たときに、町口の無意識下に言語化不能な構成意図が芽生えたのだとすればイヤな男だ。
『NUDE/A ROOM/FLOWERS』は、写真、というか写真集そのものが構成のジレンマから逃れられている希少な写真集だ。

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)
見開き四点の構成