⑤〈構成〉

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)
『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)

写真構成とレイアウト
写真集としては比較的珍しい「見開き/写真4点」という構成が、本全体の半分を占めている。「写真点数を多く入れたかったから」と町口は言うが、「多く入れたい」だけでないことは、上二点が部屋/下二点が花、左二点が部屋/右二点がヌード、対角に花とヌード…といった見開き4点の多様な使い道が物語っている。タイトルからわかるように3つのテーマが立てられており、写真構成自体はテーマに沿って素直に組まれている。しかし、この写真集は、いわゆる「写真構成」からはかけ離れた印象を受ける。どんな写真集も必ず構成されているわけで、そこには少なからず(大抵は大きく)構成者の意図が良くも悪くも反映される。たとえば写真を2点並べることによってある意味が生まれ、その写真が単体でもっていた意味を変えてしまうことも少なくない。多くの構成者がこのジレンマと格闘している。

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』は、まるで、写真家のブック(またはスリーブファイル)をそのまま見せられているかのような錯覚を覚える。その理由として、見開き4点というフォーマットの影響は大きく、一般的に2点より3点、4点と、点数が多いほうが「構成による意図」は薄まって見えるからだ。しかし本作は構成意図が弱いわけでは決してなく、むしろこの構成意図をページをめくる読者に感じさせる。この不思議な感覚は、おそらく「見開き4点」と「3つのテーマ」という独特の設計バランスから生まれたものだろう。雄しべのような男性ヌード、世帯主のようなドライフラワー、窓(フレーム)を意識する風景——3つのテーマのスキ間を浮遊する野村佐紀子の写真を見せるには、この設計である必要があったのだ。野村佐紀子のプリントを見たときに、町口の無意識下に言語化不能な構成意図が芽生えたのだとすればイヤな男だ。
『NUDE/A ROOM/FLOWERS』は、写真、というか写真集そのものが構成のジレンマから逃れられている希少な写真集だ。

『NUDE/A ROOM/FLOWERS』Sakiko Nomura(bookshopM/2013)
見開き四点の構成

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