タグ別アーカイブ: グリッド

グリッド

④〈グリッド〉

null
『here and there』(nieves/2002-2016)

ノーグリッド
「グリッドは一度も使ったことがない」(服部)
いきなり衝撃発言が飛び出す。
『here and there』(nieves/2002-2016)のような、まるまる雑誌一冊の設計でもグリッドは使わない。版面は一応は設定するが、それも無視してデザインすることが多いという。
雑誌デザインは時間との戦いでもある。多くのデザイナーはグリッドレイアウトを使うことででスピードを稼ぎ、一冊の統一感を担保するのだが、確かに、下手にグリッドに縛られるより、見た目と感覚でポンポン決められるノーグリッドという方法には別の魅力がある。服部の大胆なデザインはノーグリッドだからこそ生まれるとも言える。
注意点としては、グリッドを使わずにページ物の統一感と強度を得るには、音楽で言うところの「絶対音感」のような能力が必要になるということだろう。仮に「絶対形感」と名付けてみる。

⑤〈グリッド〉

制限
服部は自分のデザインに「平面だけで勝負する」というルールをもうけているのではないか。立体性、空間性(大抵は装飾も)はほぼ排除されている。
グリッドは基準であり制限でもある。グリッドを使わない服部にとって、「平面だけで勝負する」というルールは、グリッドに取って代わる基準と制限の役割をはたしているのかもしれない。
既存のルールではなく、自らの制限が服部のグラフィックのルールとして機能しているとすれば、「一目で服部とわかる」が少しわかる気がする。

⑨〈グリッド〉

3の倍数
「おおよその書籍が3×3mmの正方形グリッド」(町口)
「それはグリッドでなく方眼」(松本)
町口は、A列の判型を完全に割り切れるグリッドとして3mmグリッドを活用する。ブックショップMの本を実測してみたところ、確かに、3mm、6mm,9mm…と、3の倍数の数値が非常に目立つ。均等割の正方形グリッドの場合、紙面を7分割から15分割するのが一般的な方法と言われているが、対して町口のやり方——A4を3mmグリッドで分割すると、短辺70分割、長辺99分割という珍しい細かさになる。
「本文設計というより、写真のためのグリッドとして活用してる」(町口)
写真トリミング、ページに対する図版のバランス基準としての方眼グリッドであればこの細かさは納得がいく。
以前、立花文穂に8×10カメラ購入の動機を聞いたところ、
「卓上活版印刷機のサイズとほぼ同じだったから」(立花文穂)
と即答し、
「6pの活字を置いてくように、8×10のファインダーに光の粒子を配置するように撮影する」
と続けた。
活版のポイントがひとつの単位として確立されている立花文穂らしい言葉だ。