『Sunflower』 Daido Moriyama(bookshopM/2011年)
『Wild Flowers』Joel Meyerowitz(New York Graphic Society Books / Little, Brown and Company/1983年)
『Sunflower』と『Wild Flowers』
町口の「写真集ベスト3」に、『Wild Flowers』Joel Meyerowitz(New York Graphic Society Books / Little, Brown and Company/1983年)が確実に入ると言う。『Sunflower』はそれの模倣だと町口が明かした。『Sunflower』の写真点数が64枚で構成されていは、『Wild Flowers』の63枚を上回りたかったからだそうだ。町口は「写真集を形作る要素の中で「写真点数が最も重要」だと考える。
しかしながら『Sunflower』は、『Wild Flowers』とは、写真/判型/構成、その何もかもが異なる別物として仕上がった。出版年の83年から現在に至るまで、毎晩、枕元に置かれ続けた(に等しい)『Wild Flowers』は、そう言ってかまわなければ町口のモノだ。写真集を「写真の集合」ではなく「写真集という物体」として捉える町口は、Wild Flowers読者のベスト3に入るだろう。仮に『Sunflower』に模倣と言える要素があったとしても、もはやそれは、町口の夢に出るほどの原風景から参照されたものであり、一般的にはオマージュと呼ばれるものではないだろうか。
『Wild Flowers』に限らず、「ブックショップM」の写真集の作りはすべて欧米の写真集から着想されている。初めてのオナニーがヘルムートニュートンだったという町口は「世界の名書」をリアルタイムに体験することを積み重ねてきた。それが、町口覚のリソースのすべてだと言っても過言ではない。「世界の名書」で育ち「世界の名書」を着想して本を作っているのだ。たまたま見かけた洋書を模倣するのとはまったく異なる作り方だろう。