ふつうの用紙
印刷と同じく、できるだけ普通のなんでもない用紙を使う。
「用紙特性や印刷特性(書体や文字組も)の知識と経験はもちろんあるし十分興味もある。ただ、いわゆるオタクではない」(服部)
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⑧〈用紙〉
『横山裕一 ルーム』横山裕一(ハモニカブックス/2013)
アタリと仕上
著者の横山裕一から「ザラザラの紙でコンビニで売ってる安い漫画みたいにしたい」と依頼される。
「横山裕一の本なら、逆の質感が良いのではないか」と考え、ぺらぺらのアート紙の造本を提案した。
服部にはめずらしく用紙セレクトが際立つ造本であるが、服部のグラフィックであることは一目でわかる仕上りになっている。
服部は「アタリと仕上げ」の感覚がいい。仕事に手を付ける初期の段階で、こんなカンジ(もしくはこんなカンジにしたらダメ)というアタリ感と、その判断を制作過程のさまざまな要因に引っ張られずに最終形態までブレることなく仕上げる能力だ。
ぺらぺらアート紙を綴じることで生まれるヌメリ具合や、本来あってはならないレベルの激しい裏写りなど、それ単体では悪しきモノとされる要因の〝使い道〟を、制作過程を通してしっかり見分け仕上げに反映させる。
⑬〈用紙〉
『Self-image』蜷川実花(bookshopM/2014年)
紙を抄く
『Self-image』の本文は、王子Ftex[OKミューズガリバー グロスCOS ハイホワイト 菊Y目135kg]だ。原美術館で行われた展覧会『蜷川実花:Self-image』(原美術館/2014年)の図録では、[OKミューズガリバー]全7種を使用するという大盤振る舞いだ。
[OKミューズガリバー]は菊のY目T目をそろえる充実したラインナップのファインペーパーで、町口はこの用紙開発に携わった。色味/しなり具合を決定する役割を町口は担当した。
[OKアドニスラフ]の開発にも町口は携わった。[OKアドニスラフ]は、新聞用紙専門の苫小牧工場の製造ラインを使い、木材パルプを材料とした安価なラフ非塗工紙だ。軽さ、印刷特性、そしてその風合いから高い評価を得ており、ラフ非塗工紙独特の「紙焼け」という悪しき特性もまた良しとされている。また、確実にシェアを広げるpod印刷機「Indigo」は、適正用紙の少ない気難しい印刷機としても有名だが、「OKアドニスラフ80」は「印刷適正優良」と判断された。
[アンデス][OKハイランド][かなりや]といった、80年代に流通していた〝使えるラフ非塗工紙〟は、現在はほとんどが廃盤となっている。[OKアドニスラフ]は現在の〝使えるラフ非塗工紙〟だろう。
町口のよく使う書籍用紙
キンマリ/OKプリンス/金藤片面/OKシュークリーム/いしかり
並べるとどれもいたって一般的な用紙だ。