⑦〈非デザイナー系〉


「文化屋雑貨店」の商品

長谷川踏太
長谷川の父は文化屋雑貨店のオーナーだ。文化屋雑貨店は2015年、東京中のスタイリストと全国の修学旅行生に惜しまれつつ、40年の歴史に幕を閉じた。
グラフィックデザイナーだった父は、自分よりセンスのないデザイナーが作る商品を指して「それ、デザインされてるな」と言うのが口癖だった。長谷川家において「デザインされてる」は皮肉であり、長谷川は反デザインの家風に育ったのだ。70年代、モダニズムとポストモダンの狭間の時代に、家庭の内外には花柄の炊飯ジャーや目的が崩壊したオブジェが一緒くたとなって混沌としていた。長谷川の父は、時のデザインを睨みつつ、反デザイン的内圧を放出するように商品をつくり、それがひとつのメディアとなるような店を1974年にオープンした。文化屋雑貨店は反デザインの実践として存在したのかもしれない。デザイン地誌的に言えば、当時の原宿は、新宿の文化服装学院と渋谷の桑沢デザイン研究所の中間に位置するちっぽけな町だった。そんな原宿に、グラフィックとファッションを志す若者が集まりはじめたのが80年代。文化屋雑貨店は、モンクベリーズ、セントラルアパート、ラフォーレなどと肩を並べるオピニオンとして育っていた。

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