『TAKEO DESK DIARY 2006』(株式会社竹尾/2005) 写真右
『TAKEO DESK DIARY 2006』
野球チームのロゴ、写真集のタイトル、レコジャケのタイポグラフィなど様々なタイポグラフィーからグリフをひとつ抜き出しレタリングする。そのレタリングをメインビジュアルとし、ABCブック形式で並べた卓上ダイアリーが『TAKEO DESK DIARY 2006』だ。レタリングはすべて原寸で描かれており、鉛筆、マーカー、アクリルなど、多様な描画方法を用いている。
ロゴの一部を抜き出すというこの方法は、写真を極端にトリミングしたときのフレーミング効果があり、A〜Zのグリフが元々備えているキャラクターの魅力を強力に押し出す。
この本で服部が扱っているモチーフはグリフなわけだが、そのグリフはロゴからトリミングされたひとつの図形として扱われており、その図形から原型のロゴやその背景を想像させるようなつくりになっている。この本の本当のモチーフはグリフそのものではなく、〈形態〉としてのフォントやロゴなのではないだろうか。
例えば政治家の美辞麗句を相対化したり、素人っぽさを出したりなど何らかの批評性を込めるための目的でMSゴシックが使われてるのなら得心する部分はある。
でも、このポスターを見て上のような目的は全く感じず、あえてMSゴシックを使ったとしても成功しているようには思えない。
欧文のアンダーラインが和文向けのそれであるから、ベースラインより浮いた感じなのは気になるし、HOMMAは普通はHOM-MAで区切るはずだから、デザインとしての違和感は選ばれたフォントの問題だけではないと思う。
商業ポスターにMSゴシックが使われてることに驚く人は多かったが、ただそれだけで出落ちで終わってる。